転機

2008年3月下旬に家族5人で伊豆へ越してきた。あの頃の私は、何かに憑依でもされているかのように身体がずしッと重いうえに思考が働かず、寝ても寝ても眠くて1日中ベッドの中にいた。トイレとたま~にお風呂に入る(気力がある時)以外は部屋から出なかった。いや、出られなかった。ベッドで横になっていても窓の外に緑の木々が見え、風が吹くたびゆらゆら揺れる。小鳥たちが枝にとまりさえずり、近くの川のせせらぎが聞こえ、この地の豊かな自然にとても心癒された。人工のものではなく神様がお創りくださった自然の力の中にどっぷりと浸かり、良くなったり悪くなったりしながら少しずつ緩やかに回復していった。

「あぁ、私このままでいいんだ。生きてていいんだ。」と思えるようになるまで8年かかった。

病状が落ち着いてきた2015年頃、自分の病んだ経験を同じような病を抱えて苦しんでいる人たちの役に立たせたいと思うようになり、かねてからお世話になっていた子どもたちの小学校のスクールカウンセラーの先生に相談した。そして、精神保健福祉士を目指されてはどうですかとご助言いただいた。それから、ネットで精神保健福祉士について調べ、学校を探し、2016年4月から日本福祉大学で学んだ。大学を5年かかって卒業し、高崎福祉医療カレッジで国家資格を取得するための勉強を重ね、2021年3月に何とかギリギリの成績で精神保健福祉士国家資格を取得することができた。

学費を稼ぐためにパートにも出るようになった。病状が落ち着いたと言っても治癒したわけではなく、薬を服用しながらの勤務で、ミスが多かったり突然体調を崩して欠勤したりすることが健常者より多いので、なかなか長続きしなかったが、不思議とすぐ次の仕事がみつかりありがたかった。銀行の教育ローンも来月には返済し終わる。