気付き

 精神科クリニックに通うようになりイライラは治まったが、だんだん抑うつ状態となり不登校ならぬ「不炊事場」。炊事場に怖くて行けなくなった。主人が私の手を引いて炊事場へ連れて行こうとしたが、途中で足がピタッと止まり動かなくなった。動けなくなった。そのうち神殿にも行けなくなり、部屋の外にも出られなくなった。横になっていても教会の敷地内で作業をする人たちの音や声が聞こえてきて、「みんな働いているのに私は何もできない。」と自分を責めていた。教会に住まわせて頂いているのだから、私も何かさせてもらわなければと思っていても、人に会いたくない。でも、何かしなくてはと考えていたところ、教会のお墓地の草取りをしようと思い付いた。お墓地なら普段は誰も来ないからだ。何かが憑依しているのではないかというくらい身体がだるくて重くすぐ疲れてしまうので、初めは15分位しかできなかったが、毎日通ううちに1時間半位まで出来るようになった。雨の次の日はすぽすぽ根っこから抜けて、楽しいと思えるようになった。

 そんなある日、フッと「お墓地に眠っている御霊様方のお陰で今の自分たちがいるんだなぁ。」と思えた。そう思えた途端に長女のことが可愛いと思えるようになった。家に帰り、長女を膝の上に乗せて「今までお母さん、怒ってばかりでごめんね。」と謝った。すると長女は私にしがみついて「わー‼」っと大声で泣いた。私も4年ぶりに長女をギュッと抱きしめ、「ごめんね。ごめんね。」と一緒に泣いた。それを横で見ていた4歳の次女が、「お母さん、ねえねは嬉し泣きだよ。」と言ったのだ。子供とはよく見ているものだなと驚いた。

 次の日から長女の私に対する試し行動が始まった。座っている私の背中を殴ったり蹴ったり。身体のあちこちに大きな青あざができた。でも、私は何も言わずひたすら耐えた。娘の気の済むまでやらせた。もちろん痛かったが、娘の心はもっともっと痛かったことだろう。心の底から申し訳なかったという思いで一杯になった。長女が6歳の時のことである。大きくなってから当時のことを覚えているか聞いてみると、なんでかわからないけど、お母さんを蹴っていたのは覚えていると言っていた。次女は全く覚えていなかった。試し行動がどのくらいの期間続いていたのかは私も覚えていない。