育児

 産婦人科を退院後しばらくは自分のペースで育児ができた。初めてのことばかりで戸惑うことも多かったが、私のところへ生まれてきてくれた娘が可愛くて可愛くて本当に愛おしかった。

 一般企業なら、育児休暇を最長1年6カ月取ることができるが、教会は昔のしきたり通り、産後21日目には床を上げ、おつとめにも炊事場にもでなければならなかった。娘を食堂の畳のスペースに寝かせ、厨房で野菜を切っていると、娘が泣き出した。と同時に私の乳が張ってきたので、お腹が空いているんだと娘を見に行こうとすると、ある婦人さんに「子どもは泣くのが仕事!」とピシャッと言われ、泣き叫ぶ子どもの傍へ行くことも許されなかった。郷に入っては郷に従えと言うけれど、自分が知っている教会の姿とあまりにもかけ離れた環境に心が付いていけず、母乳は4カ月目には出なくなった。

 神殿では会長さんがいつ怒り出すかビクビクし、炊事場では先輩婦人さんたちに怒られないようビクビクし、私の心はとても陽気にはなれなかった。娘のお天道様のような笑顔が救いだった。

 2003年8月に次女を授かり、2005年2月に長男を授かった。

 長男を授かってしばらくして、なぜだか長女のことが可愛いと思えなくなっていった。あんなに愛おしかったのに長女のすることなすことに腹が立ち、「だからあんたが嫌いなんだよ。」と娘に面と向かって暴言を吐いていた。教会生活のストレスを長女にすべてぶつけていたのである。そんな自分が自分で嫌で、「どうして下の2人は可愛いのに長女だけ可愛いと思えないんだろう。どうして自分で産んだ子なのにこの子だけ可愛いと思えないんだろう。」と悩んだ。前世で嫁姑の関係だったんだろうかと思ったり、ある先輩の婦人さんに相談しても納得できる答えは得られなかった。